文学的散歩日記
梅雨が明けたらしい。雨と曇りの繰り返しがすでに恋しい。夏の暑さが頭をぼやかす。散歩と課題の日々で特に書くこともないので文学風に俺の散歩について書いてみる。
えたいの知れない不吉な塊が私の心を終始圧えつけていた嫌悪と言おうか——。これはちょっといけない。積もり積もったレポート課題や国際問題について話すゼミがいけないのではない。いけないのはその塊だ。以前私を喜ばせたSpotifyから流れる音楽も居堪らずさせるのだ。よく通っていた散歩道も工事中で重くるしい場所にすぎなかった。
ふとセブンイレブンに入ると私の好きなレッドブルが並べてあった。私はレッドブルを一つ買った。不吉な塊がその瞬間からいくらか弛み、私は非常に幸福であった。そのレッドブルの冷たさはたとえようもなくよかった。
今日の工事を終えた工事現場に入っていった。どうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げていった。憂鬱が罩めて来る。
「あ、そうだそうだ」その時私はレッドブルを憶い出した。ショベルカーの上に恐る恐るレッドブルを据えつけた。レッドブルに周囲が緊張しているように見えた。しばらく私はそれを眺めていた。
不意に第二のアイディアが起こった。——それをそのままにしておいて私は、なに喰わぬ顔をして家に帰る。——
「帰ろうかなぁ。そうだ帰ろう」くすぐったい気持が私を微笑ませる。ショベルカーの上に青と銀に輝く恐ろしい爆弾をしかけた奇怪な悪漢が私で、家に帰る頃には工事現場は大爆発するのだったらどんなにおもしろいだろう。
私は熱心に想像しながら家に帰っていった。